お盆ですね。
お墓参りで唱えるのは、お念仏ですか? それともお題目ですか?
こう聞かれて躊躇なく答えられる人は、たぶん信心深いご家庭で育った方なのでしょうネ。
私の育った家庭はそうではなかったので、「お念仏」と「お題目」の違いを知ったのは恥ずかしながら30歳を過ぎてのことでした。
「刀屋」という落語に教えられました。
好き合った男女が大川に身を投げて心中する間際に、片や「お念仏」を、片や「お題目」を唱え始め、これじゃああの世で一緒になれないとどちらかに合わせるのです。
少しばかり笑いを誘う場面です。
「お念仏」が「南無阿弥陀仏」であり、「お題目」が「南無妙法蓮華経」であることを知ったのは、その時です。
と、ここまで書いたところで、多少補足しておく必要に気付きました。
まず「南無」ですが、これは敬意や尊敬、崇敬を表すサンスクリット語の間投詞を漢字にしたものです。
ですから、「南無〇〇」というのは「あゝ、〇〇ヨ!」、「おゝ、〇〇さま!」のような意味になりますネ。
次に、敬意や崇敬を示す対象によって、以下のように分かれます。
1)「お念仏」は仏様のお名を敬意をもって念じることですから、「南無阿弥陀仏」の他にもいくつかあります。宗派によって違います。
・南無阿弥陀仏・・・浄土宗、浄土真宗、融通念仏宗、時宗、天台宗
・南無釈迦無尼仏・・・臨済宗、曹洞宗
・南無釈迦牟尼仏・・・黄檗宗
・南無毘盧舎那仏・・・律宗
2)「お題目」は仏様の教えを敬意をもって唱えることになります。鎌倉時代に日蓮は仏様の教えを説いた「法華経(妙法蓮華経)」こそが敬うべきものであるとしました。
そのため日蓮宗では「南無妙法蓮華経」になります。
なお、国語辞典には、「口先だけで、実質のともなわないことをお題目ということがある」とあります。「お題目ばかり並べる」などが用例です。
だとすると、「ワンフレーズ・ポリティクス」なる政治手法。某総理大臣の頃から盛んに使われ出した政治手法ですが、これなどは「お題目政治」と和訳すればピッタリなのではないかと・・・。
3)真言宗は、「南無大師遍照金剛」と唱えます。この大師は、いうまでもなく弘法大師(空海)様のことです。
弘法大師様は仏様ではありませんので、「ご宝号を唱える」と言うそうです。
最後に。
「刀屋」は、三代目古今亭志ん朝で聞きました。