「弥次さん・喜多さん」
十返舎一九とその著「東海道中膝栗毛」については、つい先日の定例配信で紹介したところですが・・・
その二人の主人公、弥次郎兵衛・喜多八はどういった関係だったのでしょう?
考えてみたこと、ありますか?
まあ、普通に想像すれば、同じ長屋の親しい友達ということになるのでしょうが・・・
この本の「発端(はじまり)」と題された書き出し部分には
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生国は駿州府中、栃面屋(とちめんや)弥治郎兵衛(やじろべい)といふもの、親の代より相応の商人にして、百二百の小判には、何時でも困らぬほどの身代なりしが、安部川町の色酒にはまり、其上旅役者華水(はなみづ)多羅四郎(たらしろう)が抱(かゝ)への鼻之助といへるに打込、この道に孝行ものとて、黄金の釜を掘いだせし心地して悦び、戯気(たはけ)のありたけを尽し、はては身代にまで途方もなき穴を掘明(ほりあけ)て留度なく、尻の仕舞は若衆とふたり、尻に帆かけて府中の町を欠落(かけをち)するとて・・・
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という驚愕の一文があります。
少し注釈を加えます。
▼「駿州府中」や「安倍川町」の地名から、弥次さんは静岡のかなりの商家の生れ。
▼「鼻之助」は喜多さんのこと。その旅役者としての名前です。
▼「府中の町を欠落」して江戸に移ったようです。
で、肝心の二人の関係ですが、この一文に在るキーワード「黄金の釜を掘いだせし」・「穴を掘明(ほりあけ)て」・「尻の仕舞」から、容易に推測できます。
そうです。この二人の関係は愛人関係。
本の他の部分には、弥次さんが30歳ほど年上だったことが書いてあります。
そんな関係の二人ですが、本に書かれているのは行く先々の宿場での女性との出来事ばかり。